トラベルアドバイザーと旅マエ・旅ナカを考える

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飛行機欠航!列車運休!テーマパークが休園!コロナウイルス理由の旅行の取消料はどうなる?~約款を基に考える~

 旅行の問い合わせで一番多いのは取消料についてです。

また、旅行会社とお客様の間で最もトラブルの原因になるのも取消料がらみのやりとりです。

 

コロナウイルスの感染拡大防止のため、運送機関・宿泊施設・観光施設が運休・減便・休業・時間短縮などの対応をしています。

 

こういった状況での旅行の取消はどうなるでしょう?

 

旅行どころじゃないから取消料はかからない?

旅行のとりやめは自分たち都合なので取消料がかかる?

 

今回は、お客様と旅行会社の契約条項をまとめた約款を基に解説します。

 

※あくまでも約款をどう読み取るか?の解説のため、対応は各旅行会社によって異なります。詳細は申込みをしている旅行会社へお問い合わせください。

 

 

 

約款とは?

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フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)より



あまり聞き慣れない言葉かと思いますが、契約内容をあらかじめまとめた文言のことです。企業と消費者の間で交わされる契約は、約款に定めた条項を双方が同意したと見なして進められます。

約款の中には、いつ契約が成立するか?契約成立にあたっては何が必要か?契約を解除する場合にはどうするか?契約内容が守れない場合はどうするか?などなど、細かな約束事が記載されているのですが、旅行会社の窓口でこれを1つ1つ確認していたら途方も無い時間がかかります。

不動産屋で賃貸契約をする際の重要事項説明とも似たような説明が、旅行の予約時に発生すると思ってください。

そんなことでは消費者も困るし、企業も煩雑な手続きが必要になるので、約款を定めて契約手続きの簡略化をしています。多くの旅行会社は、観光庁(長官)と消費者庁(長官)が作成した標準旅行業約款を採用あるいはほとんど同じ内容で使用しています。

 

今回の解説ではこの標準旅行業約款を基に解説します。

興味のある方は下記国土交通省作成の標準旅行業約款の募集型企画旅行の部をご覧ください。

http://www.mlit.go.jp/common/001239136.pdf

 

約款から読み解く旅行者の契約解除権

旅行業約款の募集型企画旅行の部第4章16条において、【旅行者は取消料を旅行会社へ払うことでいつでも契約を解除することができる】とあります。

よく、「取消料はいつから発生するか?」と問い合わせをいただくのですが、多くの方が取消料発生日までに取消をしないと取消料がかかると認識されています。

これは認識として正しいのですが、「いつでも取消は出来るが、所定の日からは取消料がかかる」がより正確です。

 

所定の日とは、「取消料は宿泊日の○○日前から」「出発日の××日前から」と取消料が発生する日が定められているため、この日より前までの契約解除は取消料がかかりません。

中にはキャンセル不可=返金不可、となっているものもあるのでご注意ください。

 

さて、契約解除と取消料についての基本を確認したので、次は取消料無しで取消が出来る例についてです。

第4章16条の2項には、旅行者はある条件において、旅行開始前に取消料無しで旅行契約を解除できると定めています。抜粋すると・・・

天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。

 

読み解くと、以下の時は取消料を支払わずに取消が出来るとなります。

①天災地変、戦乱、暴動が起きたことで安全かつ円滑な旅行が出来ない、又は出来ない可能性が大きい時

②列車や航空機が運休・欠航したり、宿泊施設が宿泊者の受け入れを中止したことにより安全かつ円滑な旅行が出来ない、又は出来ない可能性が大きい時

③行政省庁、政府といった国の命令により安全かつ円滑な旅行が出来ない、又は出来ない可能性が大きい時

 

共通しているのは、何か起きたときに、それが原因で旅行が安全かつ円滑に出来なさそうな時を想定していることです。

 

この例にそれぞれ当てはめると・・・

新幹線・航空機の運休は、予定していた旅程が狂うため、取消料無しでの取消事由に該当します。

また、運休の交通機関そのものが取消料無しで取消を受け付けると決めた場合は、旅行会社もそれに習うことが多いです。 

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では、旅行で行く予定をしていたテーマパークが休園となった場合はどうでしょう?

元々テーマパークに行く予定だったとしても、パークが休園となることで「安全かつ円滑な旅行」ができないに当てはまるでしょうか?

 

約款には、運送機関や宿泊機関のサービス中止に関しては記載されていても、観光施設等の旅ナカ部分については記載されていません。約款通り考えるなら、テーマパークが休園したので旅行も止めるとなると、取消料対象の契約解除となります。

 

しかし、過去にテーマパークが大型台風接近により休園を決めたことがあり、その際は取消料無しで取消(=旅行代金の全額返金)となったことがあります。

見かけ上は、パークが休園したから取消料がかからないとなりますが、これは台風接近に伴い、交通機関の運休等も合わせて行われていたためであり、テーマパークが休園したからの対応ではありません。

(パークチケットの全額返金はパークの休園による対応ですが、宿泊施設や交通機関が取消料を免除するのは休園が理由では無かったためです)

 

ここまで、旅行者の契約解除権について解説してきました。

約款で難しいのは、解除権があると定めていても、誰が「旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きい」と判断するか?どこまでが安全か?円滑な旅行になるか?が明確にされていません。

私はこの点が旅行会社とお客様の間でのトラブルの原因になると考えています。 

 

特に今は、コロナウイルスの感染拡大による取消がこの問題のいい題材になると思いますので次に考えてみました。

 

国内旅行を取消す場合

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国内旅行をコロナウイルスにより取消する場合について、約款を基に考えます。

約款に習うなら、今の現状で安全かつ円滑な旅行ができるか?が基準です。

 

皆様はどのように考えますか?

 

国内では発生元の中国に渡航歴が無い方にも感染が確認され、国内旅行中の感染リスクもあります。

しかし、安全かつ円滑な旅行に影響を与える原因として明記されている、「運送機関や宿泊施設がサービスの提供を中止」、「官公署の命令」はどうでしょう?

 

現在、航空会社は2020年4月5日搭乗分までの予約を持っている方に対し、無手数料でキャンセル・払い戻しを受け付けています。(2020年3月11日現在)

また、JRに関しては、全路線・全列車の無手数料払い戻しを期間を定めず行っています。(2020年3月11日現在)

 

一方の官公署の命令については、まだ「旅行禁止」「外出禁止」とは決まっていません。北海道知事の非常事態宣言を受け、北海道の方は外出を控えるようにと指示されていますが、こちらをどう捉えるかは人によって判断が難しいところです。

これはそのまま旅行会社も言えます。

そのため、飛行機利用・JR利用に関しては取消料無しで旅行の取消が可能ですが、それ以外の旅行を取りやめる時の取消料がかかるかどうかの判断は、各旅行会社に任せられている状況です。

 

コロナウイルスで海外旅行を取消す場合

海外旅行に関しては、明確な判断基準が一つあります。

それは外務省の海外危険情報です。

 

テロ、暴動といった危険情報と、感染症危険情報の2つがまとめられており、旅行会社はいずれかの危険情報がレベル2(不要不急の渡航を自粛)以上になった場合に、海外旅行の中止をします。

この場合は「官公署の命令により、安全な旅行が出来ない可能性が高い」にあたるのでわかりやすい例です。

  

また、旅行会社の契約解除権についても約款は定めており、読み解くと、「当社の関与し得ない事由によって契約書面に定めた旅行の日程が安全かつ円滑な実施が出来ない、出来なくなる恐れが極めて大きいときは、旅行者に理由を説明して契約を解除する」とあります。

この約款は、旅行開始前はもちろん旅行開始後にも適応されます。そのため、旅行中に相手国側の都合で入国出来なくなったなどの対象になった場合も旅行契約が解除されることがあります。

 

さて、旅行中に契約が解除されたとなると気になるであろうことは2つ

①旅行中に契約解除されたら帰国までどうすればよいか?

既に払った旅行代金はどうなるのか?

です。

①については、海外旅行の企画旅行の契約を解除した場合は、旅行者の求めに応じて帰路の手配を引き受けると約款に定めています。(第20条)

しかし、帰路にあたっての費用はお客様負担です。これも約款によります。

②の費用については、3泊5日のハワイ旅行で、現地着後に3日目に帰国を余儀なくされたとして考えます。

この場合は、往路の飛行機と2泊の宿泊は利用したので返金対象外となり、返ってくるのは残り1泊分の宿泊料と帰りの航空券の代金から、ホテルと航空会社に払う取消料を差し引いた分が返金額となります。

これも約款で定めており、既にサービスを受けたものについての旅行会社の債務は有効な弁済をしたものとする、とあります。

つまり、旅行出発後にコロナウイルスによって旅行が継続できないような官公署の命令が発せられた場合、帰る手段のサポートをお願いできるけど費用は自己負担です。既に払った旅行代金は少し返ってくる、ぐらいに思っておいた方が良いです。

 

 

先日取り消しした航空券の取消料が免除になったけど取消料は返ってくるの?

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今回の件に限らずよくある事例なのですが、取消が通常通りかかって取消をした翌日以降に、取り消しした旅行の取消料が免除になることもあります。

同じ旅行だったのだから取消料も負担無しよね?と思いますが、遡っての対応は出来ないため、残念ながら取消料の返金はありません。

約款における取消の考え方は、「取消料を払えばいつでも取消が出来る」ため、取消をする際に取消料をもらわないのは特例です。

良い例かわかりませんが、自動車を購入した際に購入した翌日からキャンペーンでお得になりますとなった場合に、遡って同じキャンペーンが適応出来ないのと同じです。(自動車販売業界では遡って対応しているかどうかはわかりませんが・・・)

遡って何でも対応ありにすると、世の中のルールは何の意味もなくなってしまいます。

 

いつ取消すればよいの?

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遡っての対応が出来ないのなら、取り消ししたタイミングによってキャンセル料の負担が変わってくる!じゃあいつ取り消しすれば良いのか?判断に悩まれる方もいらっしゃると思います。どうしても旅行の取消か出発か悩まれるのであれば、私からのアドバイスです。

①取消料が発生する前に旅行に行くか決断する。旅行に行くと決めた場合は、旅行途中で不測の事態が起き、その際の費用は自己負担と確認する。

②取消料が既にかかっている場合は、取消料が高くなる前に早めに取消をする。

③行きたい気持ちと取消の気持ちが半々くらいなら、取消料率が上がる前日までといったように期限を決める。

 

 

私が個人的に思うこと

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この数週間の間で私が思ったことを少しお話しします。

約款通りの案内でいけば、「お客様への金銭的な補償は全然無い!」と正直思います。

旅行に行きたいけど、この状況じゃ安心して行けない。キャンセルしたくてキャンセルするわけじゃないから取消料は払わない。無事出発できたとして、帰国せざるを得ない状況になったとしてもその時の費用も納得いかないので払わない。

何回もこういった方のお話を聞きました。

前々から楽しみにして計画をしていたのは私たちも知っていますから、急に世の中がこんな状況になって、楽しみにしていた旅行が台無しだ!納得いかないといった気持ちもわかります。

しかし、旅行に行くと決め、行くか行かないかの判断をするのは、お客様の意思次第です。現状、コロナウイルスの感染が不安だから旅行を取りやめるのは、公的機関からの命令が無い限りはお客様都合となってしまいます。

約款に当てはめて全てを解決出来るとは思いませんが、どうか旅行の契約はこういったものだとご理解いただきたいです。

 

国内外の状況は常に変化しているので、ご自身でも調べるとともに、どうしたらよいかを申込みした旅行会社に相談して決めてください。私も含め、旅行会社の人間はそのときの状況に合わせて皆様の相談に乗れるように努めています。

 

まとめ

ふだん何気なく旅行の申込みをしている方も多いと思いますが、旅行の予約をする際の手続きは全て約款に定められた事項に沿って進められます。

今回の内容はなるべくわかりやすく解説しようと努めましたが、約款の性質上、変に言葉や表現を変えるとこの場合はどうなるのか?と想定されていないことがまた発生しかねるので原文をなるべく利用しました。

旅行の申込みをする際に、事細かに約款の説明を受けることは正直無いと思います。

しかし、双方の契約事項が定められていることなので、こんなの聞いてない!知らない!とは言えません。

お店で申込みの場合は、旅行条件書といった細かな字が沢山書かれた書面を貰うかと思いますが、そちらが今回解説した約款です。

インターネットで申込みの場合も申込みに当たって以下をお読みいただきチェックをつけてくださいといった案内が出ますが、あれが約款です。

面倒くさいなどと思わずに、目を通してください。

約款とは何か?を通して、旅行の申込みは事細かな契約を交わしていることに気づいていただけたら、今回の解説をした甲斐があったなと思います。

 

私もまだ勉強中の身であり、約款の全てを把握出来ていません。故に、あまり楽しい内容では無かったと思います。中には間違った説明があるかも知れません。

それでも今回の記事を最後までお読みいただいた方へ感謝申し上げます。

5,700文字の長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

 

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 以前書いた雑記です。この時の見通しを訂正するならば感染力は強いと言わざるを得ないですが、死のウイルスでは無いとの考えは変わりません。個人で出来る予防をしましょう!

tabiodori.hatenablog.com